『闇に潜む者』〜第七章 "変化(へんげ)"
作:月華
「そろそろ、別の女の体に入るとするか」
ベッドに横たわる二人の男を見つめながら、真沙子は呟いた。
少女の口から漏れるにしては、男のような口調だが、それを気にするための意識は、目の前でぐったりとしている男には残っていない。真沙子の体に精を吸い取られ、気力無く横になっているだけだった。
目の前の男に対してしたように、金曜日に真沙子の体に入って以来、真沙子に潜む者は、男の精を集め続けていた。男の体を知らなかった真沙子の体は、潜みつつ、男の精を集めるには具合が良く、おかげで新しい能力も身に付いたようだった。
「新しい能力を、試してみるとするか」
真沙子は小さく溜息をついてから、股間に意識を集中した。体の奥にある精がクリトリスに集まり、だんだんと熱と形を帯び始めていく。
「ああ……あはぁ……」
股間から沸き起こる快感に、真沙子は聞く者を惹きつけて止まない声を上げる。
快感に声を上げる少女。だが、彼女が感じているものは、少女が感じるはずのない快感――射精の快感だった。
ペニスがあるはずのない股間から、彼女は射精の快感を感じ、喘ぎ声を上げているのだ。
「くふっ……出る……」
まるで、目に見えないペニスからの射精に声を上げる少女。そんな彼女の体に、変化が起こった。クリトリスが包皮から姿を出し、さらに大きくなっていくのだ。それはまさに、クリトリスの勃起だった。
「出る……出ちゃう……」
射精の感覚が続く間、真沙子のクリトリスはだんだんと大きくなる。
「くはぁ……あ……」
なおも変化するそれは、もはやクリトリスというよりも、小さなペニスと言った方が良かった。まだ親指程度の大きさながら、その先端には雁首のようなくびれが見て取れる。
真沙子の勃起は、さらに続く。
親指大から二回り以上も大きくなり、かつて健司の体に潜んでいた時と並ぶほどの大きさになった。
「あはぁっ!」
真沙子がひときわ大きな声を上げた瞬間、ペニスは大きく跳ね上がってから、後は本物同様に真沙子の体に合わせて脈打ち始めた。
大きさも形も、健司のものと同じぐらいだったが、それが少女の股間から生えている様は、男の性器が持つ凶暴さを、一層鮮明にしていた。
「ふふふ……感覚も、男と同じだな」
真沙子は自らの右手で擦り、己が生み出したものを確かめた。男のものに添えられた少女の指先が、男の敏感な場所を探り当て、なぞり上げていく。
「これならば、男の体を通さずに、別の女に入り込めるはずだ」
真沙子に潜む者は、股間に生える男のものを擦りながら、これを誰に埋め込もうか、思いめぐらすのだった。
「先生、相談があるんですけど」
月曜日の放課後、真沙子は保健室に立ち寄り、保健医を勤めている、斉藤麻衣に声をかけた。
「どんな相談なの?」
深刻な表情で訴えかけてくる真沙子の顔を、麻衣はじっと眺めた。保健医という立場柄、化粧っ気はないものの、きりりとまとまった顔立ちが、真沙子の顔に近づく。
「あの……あたしの体の相談なので、二人っきりになりたいんですけど」
「いいわよ。今日はそろそろ閉めるつもりだったし」
言うなり麻衣は、保健室の入り口に"CLOSE"との札をぶら下げ、内側から鍵を閉めた。まだ歳も25と若く、校内の女性徒からは悩み事の相談を持ちかけられることの多い麻衣の、手慣れた行動だった。
「まずは、お話を聞かせてもらえる?」
真沙子に椅子を勧めてから、自らも向かい合うようにして座ってから、麻衣は再び顔を覗き込むように尋ねた。
「先生、あたしの体、変なんです。これから見せますから、絶対に驚かないでくださいね」
間近で向かい合った麻衣の瞳を見ながら、真沙子に潜む者は、麻衣へと視線で暗示をかける。その言葉にある通り、これから見せるものに驚かないようにするだけでなく、さらに別の行動をとるように……
「ええ、分かったわ」
暗示をかけられたことなど気づかずに、麻衣は普通に返事をする。
「じゃあ……これを見てください」
真沙子は、スカートを持ち上げた。そこにはパンティがあるだけだったのだが、その中は異常な膨らみを見せていた。
「それは……」
途端、麻衣の表情が変わる。だが、驚いた表情ではない。それは、目の前のものに陶然とする表情だった。
真沙子に潜む者が仕掛けた、生徒のものを弄ぶ淫乱教師としてのイメージが、麻衣の中で実行され始めたのだ。
麻衣の視線が男のもので膨らむパンティに向かうのを確認してから、真沙子に潜む者は、またしても暗示をかけた。だが今度は、麻衣に対してでなく、真沙子に対してだった。
真沙子に潜む者に押しつけられていた真沙子の意識を呼び出し、そして麻衣の行動を恥ずかしがりつつ受け入れるように命じる。
後は、真沙子に潜む者は、真沙子の視点から傍観者として、二人の痴態を眺めつつ、タイミングを見計らって真沙子の体から麻衣の体へと移動するだけだった。
「これって、オチ○チンなの?」
「そんなこと、言わないでください」
真沙子はスカートを降ろして、さらけ出されていたものを隠す。
「恥ずかしがることはないわ。ねえ、もっと先生に見せてちょうだい。治療だと思って」
「は、はい……」
治療と言われて、真沙子はおずおずとスカートを持ち上げる。
「あ、先生……」
スカートの中に手を伸ばしてきた麻衣に向かって、真沙子は小さく声を上げる。だが、真沙子もさほど抵抗はしない。むしろ麻衣に協力するように腰を持ち上げて、麻衣が下着を降ろすのを手伝ったのだった。
スカートに阻まれて、麻衣が何をしているのか真沙子には見えない。
「あ、先生……そんなこと……」
見えずとも、麻衣が何をしているのかは分かる。麻衣の指が、真沙子に生える男のものを掴み、その肌触りを確かめるように撫で上げているのだ。
「先生に任せれば大丈夫よ。それよりも、どう? 触られて気持ちいい?」
「はい……気持ちいいです」
「そう。それじゃあ、これはどうかしら?」
撫で上げていた手が揃って真沙子のペニスに添えられ、そして上下に擦り始めた。
「あ、や、先生……そんな」
「どうなの。気持ちいいの? 気持ちよかったら、そう言ってくれないと、先生分からないじゃない」
「あ、はい……気持ちいいっ」
「そう。先生嬉しいわぁ……」
自らの愛撫によるペニスへの刺激によがり声を上げる生徒を見て興奮したのか、麻衣はうっとりとした声で、そう呟く。
(まったく、いやらしい教師だ)
真沙子に潜む者は、自分が暗示をしたことなど忘れたかのように、麻衣の声を聞いて、そう感じていた。二人の意識を変えただけで、直接行動を取らせるようなことはしていないものの、二人の女にここまでの痴態を演じさせるだけで、真沙子に潜む者は満足感を感じていた。
「それじゃあ、もっともっと気持ちよくしてあげる」
「先生、何を……あ、何、それ……」
ねっとりとペニスを包み込まれる感覚に、真沙子は声を上げて、背中をのけぞらせる。初めてのペニスで感じる、初めてのフェラチオだ。
「何……気持ち……よすぎちゃう……先生……腰が……」
真沙子の言葉に、麻衣は言葉ではなく、舌の動きで答える。スカートの中から響いてくるのは、くぐもった麻衣の声と、ぴちゅぴちゅと言う音、そしてスカート越しに見える麻衣の頭の動きだった。
「先生……変です。何か……出ちゃいます……」
傍観者を決め込んでいるものの、真沙子の感覚は潜む者へも伝わってくる。
(おっと。こいつの口の中で出されても、今の能力では移動は出来ないからな)
麻衣の淫乱ぶりに苦笑しながら、真沙子に潜む者は、念を通じて麻衣に暗示をかけた。
「うふふ。まだ、出させてあげないわよ」
射精を促す行為を止め、スカートから顔を出すなり、そう言ってから、麻衣は舌を舐め上げた。スカートの中にいたためか、頬はすっかり赤くしつつ、うっとりとした瞳で、真沙子を見つめてくる。
「なんか……体が変なんです……体の奥が……熱くって」
まだ、射精というものを知らない真沙子は、今の体をそう表現するしかなかった。射精をしたことのない童貞を弄ぶような興奮が、麻衣をますます高ぶらせていく。
「先生……お願いします……」
麻衣の口による快感に取り憑かれたのか、真沙子はスカートを持ち上げて、麻衣を上目遣いに眺める。
「うふふ。それじゃあ、先生も楽しませてもらうわよ。
さ、まずはベッドに横になりなさい」
童貞の少女は、淫乱な女保健医に命じられるままに、近くにあったベッドに横たわり、自分からスカートをまくり上げた。
「うふふ。随分と素直なのね。
それじゃあ御褒美に、もっと気持ちの良いこと、してあげる」
麻衣の言葉に、真沙子の股間がぴくりと動き、さらに大きさを増す。
「ふふ、言われただけで、ここを大きくしちゃうだなんて、随分といやらしいのね」
言ってから、麻衣は素早くスカートと下着を脱ぎ、ベッドに横たわる真沙子に馬乗りになった。膝立ちになり体を移動して、自らの股間を、少女のペニスへと覆い被さるような場所へ持ってくる。
「ほら。先生のここって、もうこんなに濡れているの。
あなたのオチ○チンなんか、すぐに入っちゃうわよ。ここに入ると、すごく気持ちいいのよ」
「先生……早く、お願いします」
「分かったわ。先生も、もう我慢できないものね。ん……」
麻衣は腰を下ろして、真沙子の童貞を自らの入り口へと導いていく。
「んん……んふ……」
「あは……あぁ……」
押し殺したような女性の声と、押さえることすら忘れた少女の声が、傍観者としての真沙子に潜む者へと伝わってくる。
(ふふふ。二人とも、予想以上に楽しませてくれる)
真沙子に潜む者は、真沙子の視点から、二人の様子を眺めることになる。体の上に女性がまたがってきて、股間にある男のものを締め付けてくる。そして股間から伝わってくる男の快感に、自らの口元からは、少女の切なげな声が漏れていく。
「あ、また熱いの……体の中が変なんですっ」
ついさっき達する寸前までに上り詰められていた真沙子の体は、麻衣の女性に包み込まれるなり、再び絶頂へ達しようとしていた。
「そのままよ。先生がもっともっと気持ちよくしてあげるから、体の中のもの、先生に出すのよ」
「あぁ……はぁっ……うくぅ」
初めて男の体を体験する真沙子は、射精することがどんなことか分からない。ただひたすら、体の変調を訴えつつ、そこから沸き起こる、止めどない快感に流されるだけだ。
だが、真沙子に潜む者は、その変化を全て察している。
(そろそろ体を移し替えるか)
真沙子に潜む者は、真沙子の体の中心へと移動していく。
「ひぎっ!」
潜むものの移動は、真沙子に新しい刺激を与えた。お腹が圧迫され、股間が、はち切れそうになる。
「なんか……出ちゃうっ!」
「出すよのっ! 先生の中に、出してっ!」
絞り出すように、麻衣は腰をひねりながら真沙子へと密着させ、さらに激しい刺激を与える。
「あぁぁっ!」
激しい刺激に、真沙子は大声を上げた。
真沙子に潜む者からは、真沙子の感覚が薄れていく。視覚が消え、聴覚が消え、肌の感覚が無くなっていく。そして、ペニスの感覚だけを、真沙子に潜む者は感じていた。
その唯一感じていた刺激が、突然変わる。ペニスだけで感じていた感覚が、一斉に体全体に広まる。圧迫される股間から生まれる快感が、頭上へ、指先へ、爪先までと流れていく。
「あはぁぁっ!」
耳元に、女性の喘ぎ声が聞こえてくる。さっきまで頭上から聞こえてきた麻衣の声だ。大人の女性の、感極まった声だ。
視界がゆっくりと広がっていく。頭上にいたはずの麻衣の姿は無く、代わって眼下に、ぐったりとした顔の真沙子が見える。
後頭部に感じるまとめ上げられた髪。肩から胸元に感じる乳房の重さ。股間に埋め込まれた、真沙子から生えるペニスの感覚――全て、麻衣の感覚だった。
「どうやら。上手くいったようだな」
麻衣に潜む者は、自分の支配下に置かれた体を見下ろした。
「さて、こいつを支配しておかなければならないな」
かつて、有紀の体から健司の体に移動した時と同じく、憑依していた真沙子の体を支配しておくには、真沙子に精液を注ぎ込む必要があった。今の麻衣には、真沙子に注ぐためのペニスは無い。
だが、
「さて、お前のペニスは、俺がもらってやろう」
気を失ったままの真沙子に向かってそう言ってから、麻衣は体の状態を確認するように腰を動かした。上下に軽く動かすと、真沙子のペニスが胎内で動くのが伝わってくるのを確認してから、麻衣は腰を下ろし、真沙子の体へと密着した。
「いくぞ」
気合いをいれるために声を上げてから、麻衣は腰を密着させたままに、腰をゆっくりと下げていった。真沙子のペニスが、麻衣の膣上部へとぶつかってくる。だが、麻衣は構わず腰を下げ続ける。
「ん……ん……」
麻衣の股間に、射精に似た快感が沸き起こる。そして、真沙子の時と同様、その感覚が続く間に、新しい肉体が生まれていく。もっとも、正しくは生まれていくのではない。膣の上部に当てられた真沙子のペニスを、麻衣の股間が飲み込み、己の肉体の一部にしようとしているのだ。
「ん……」
体の中にペニスが埋め込まれる感覚――文字通り、埋め込まれていく感覚だった。今や麻衣はペニスを己の物として感じていた。自分に埋め込まれると同時に、真沙子へ埋め込んでいるものとして。
麻衣はさらに腰を下ろす。
「あ……あ……」
今度は、真沙子が声を上げた。麻衣とは違う、切なげな声を。
同時に、真沙子の中を感じるペニスからの感覚がだんだんと変わっていく。しっかり食い込んでいた感覚から、両側から挟み込まれるだけの感覚へ。
同じだったものが、だんだんと別のものへ変わっていく。
(そろそろ、いいだろう)
麻衣は、今まで下げていた腰を、今度は引き抜くような動作へと変えた。
ちゅぷっ、と湿った栓の抜ける音がしたと思うと、麻衣と真沙子の股間が離れた。
「やはり、この方が良いな」
呟く麻衣の股間には、粘液に濡れるペニスがそびえ立っていた。一方で真沙子の股間には、さっきまで生えていたはずのものは無く、濡れた女性の入り口があるだけだった。
「それでは、お前を支配させてもらうぞ」
そう呟いて麻衣は、奪ったばかりのペニスを、さっきまでの持ち主の中へと、埋め込んでいくのだった。
第七章<完>
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この作品は、
「月華の本棚」http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/8113/main.html
に掲載されたものです。